霊園・墓地選び

公営霊園vs民営霊園vs寺院墓地|それぞれの特徴と選び方のコツ

こんにちは。終活アドバイザーの田中美和子です。
石材店を営む父の背中を見て育ち、私自身も15年間、石材店でお客様のお墓づくりに携わってきました。

お墓選びは、多くの方にとって初めての経験。「何から始めたらいいの?」「費用はどれくらいかかるの?」と、不安な気持ちでいっぱいになってしまうのは当然のことです。

実は私も5年前、最愛の母を亡くした際に、自分自身がお墓選びで深く悩みました。専門知識はあっても、いざ自分の親のこととなると冷静ではいられず、何を基準に選べば良いのか分からなくなってしまったのです。この経験から、「お墓選びは知識だけでなく、心に寄り添うサポートが必要だ」と痛感し、終活アドバイザーの道に進みました。

この記事では、そんな私の経験も踏まえながら、お墓の3つの主な選択肢である「公営霊園」「民営霊園」「寺院墓地」について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを分かりやすく解説します。

まずは全体像を把握!公営・民営・寺院の比較一覧表

お墓の選択肢は、運営している主体によって大きく3つに分けられます。
それぞれの特徴を比較することで、ご自身の希望に合うのはどのタイプか、大まかな方向性が見えてきます。まずは、以下の比較表で全体像を掴んでみましょう。

比較項目公営霊園民営霊園寺院墓地
運営主体都道府県、市区町村など公益法人、宗教法人など寺院(宗教法人)
宗教・宗派原則不問不問の場合が多い原則として寺院の宗派に属する(檀家になる)
永代使用料安価な傾向やや高価な傾向寺院による
年間管理費安価な傾向やや高価な傾向護持会費として納める
申し込み資格居住地などの条件あり条件はほとんどない檀家になることが条件の場合が多い
募集時期年に1〜2回など限定的随時募集随時募集
墓石のデザイン制限がある場合が多い自由度が高い比較的自由だが、周囲との調和が求められる
石材店の指定なし指定される場合がほとんど指定される場合が多い
メリット信頼性が高い、費用が安い選択肢が豊富、設備が充実手厚い供養が受けられる
デメリット抽選になることが多い、自由度が低い費用が高め、経営破綻リスク檀家としての務めや費用負担がある

【公営霊園】自治体運営の安心感と費用の安さが魅力

公営霊園とは、都道府県や市区町村といった自治体が運営・管理している霊園のことです。
都内で言えば、都立青山霊園や多磨霊園などが有名ですね。

私が石材店にいた頃も、「まずは都立霊園に応募してみたい」というお客様は非常に多く、その人気の高さは今も変わりません。

公営霊園のメリット|信頼性と価格が最大の強み

公営霊園の最大のメリットは、何と言ってもその信頼性の高さ費用の安さにあります。

  • 経営の安定性
    自治体が運営しているため、倒産や閉鎖といったリスクが極めて低いのが特徴です。 お墓は長く使い続けるものですから、この安心感は非常に大きいでしょう。
  • 費用の安さ
    永代使用料や年間の管理費が、民営霊園や寺院墓地に比べて安価に設定されていることがほとんどです。 営利を目的としていないため、費用を抑えたい方にとっては大きな魅力となります。
  • 宗教・宗派が不問
    基本的に宗教や宗派を問わず、誰でも申し込むことができます。
  • 石材店を自由に選べる
    民営霊園とは違い、墓石を建てる際に石材店の指定がありません。 複数の石材店から見積もりを取り、比較検討して納得のいく業者を選ぶことができます。

良い石材店の条件とは、単に価格が安いということだけではありません。
お墓は長く受け継がれていくものですから、しっかりとした施工技術、特に耐震性などへの配慮があるかどうかが重要です。

例えば、私が以前から素晴らしい仕事をしていると感じている石材店の一つに、石川県津幡町で創業97年の歴史を誇る山本石材店さんのようなお店があります。
一級の国家資格を持つ職人さんが、基礎工事から耐震性まで考慮した丁寧な施工をされており、地域の方々から長年にわたって厚い信頼を得ています。
お住まいの地域で石材店を探す際も、このように歴史と確かな技術を持ち、お客様一人ひとりに寄り添ってくれるお店かどうか、という視点で選ばれることを強くお勧めします。

公営霊園のデメリット|申し込みには条件と「運」が必要?

魅力の多い公営霊園ですが、誰でもすぐに入れるわけではない、という点が大きなデメリットです。

  • 申し込み資格が厳しい
    「その自治体に○年以上住んでいること」「手元に遺骨があること(焼骨があること)」など、申し込みに厳しい条件が課せられることがほとんどです。 生前にお墓を建てたい(寿陵)と考えている方は、そもそも申し込めないケースが多いので注意が必要です。
  • 募集時期が限られ、抽選になることが多い
    募集は年に1回など限られた期間しか行われず、希望者が殺到するため抽選になることがほとんどです。 人気の霊園では倍率が数十倍になることも珍しくなく、何年も応募し続けているという方もいらっしゃいます。
  • 自由度が低い
    墓石の大きさや形、デザインなどに規定が設けられていることが多く、個性的なお墓を建てたいという希望を叶えるのは難しい場合があります。

【元石材店員が解説】公営霊園はこんな方におすすめ!

公営霊園が向いている方

  • とにかく費用を抑えたい
  • 運営母体の安定性を最も重視する
  • お墓のデザインに強いこだわりはない
  • 申し込み資格を満たしており、抽選になることも覚悟の上で気長に待てる

私がお客様にご案内する際は、「公営霊園は第一希望として応募しつつ、もしものために民営霊園なども並行して検討しておく」という方法をおすすめしていました。

【民営霊園】自由度の高さと充実したサービスが特徴

民営霊園は、公益法人や宗教法人から委託を受けた民間企業が運営・管理している霊園です。
宗教法人が運営母体ではありますが、その多くは宗教・宗派を問わず利用できます。

公園のように明るく整備された霊園が多く、近年非常に人気が高まっています。

民営霊園のメリット|デザインや設備の選択肢が豊富

民営霊園の魅力は、利用者のニーズに応える自由度の高さサービスの充実度にあります。

  • 申し込みやすい
    公営霊園のような居住地などの条件はほとんどなく、遺骨がなくても生前にお墓を建てることが可能です。 思い立った時にいつでも申し込めるのが大きなメリットです。
  • デザインの自由度が高い
    区画の広さや墓石のデザイン、石の種類などを自由に選べる場合が多く、故人や家族の想いを形にしたオリジナルのお墓を建てやすいのが特徴です。 ガーデニング風の霊園や、ペットと一緒に入れる霊園など、多様なコンセプトの霊園が増えています。
  • 設備が充実している
    駐車場や休憩所、法要施設などが完備されているところが多く、バリアフリーに対応している霊園も増えています。 中には最寄り駅から送迎バスを運行している霊園もあり、お参りのしやすさも魅力です。

民営霊園のデメリット|費用と「石材店指定」に注意

自由で魅力的な民営霊園ですが、いくつか注意すべき点もあります。

  • 費用が比較的高め
    充実した設備や管理体制を維持するため、永代使用料や管理費は公営霊園に比べて高くなる傾向があります。
  • 石材店が指定されている
    ほとんどの民営霊園では「指定石材店制度」が採用されており、その霊園が指定した石材店でしかお墓を建てることができません。 そのため、複数の業者で価格を比較する「相見積もり」ができないというデメリットがあります。

【元石材店員の視点】指定石材店制度とは?
なぜ石材店が指定されるのか、疑問に思う方も多いでしょう。これは、霊園の開発に多額の費用がかかるため、石材店も開発費用を一部負担している、という背景があります。 石材店は費用を負担する代わりに、その霊園でお墓を建てる権利を得る、という仕組みです。この制度自体が悪いわけではありませんが、価格競争が起きにくいため、費用が割高になる可能性があることは知っておきましょう。

  • 経営破綻のリスク
    民間企業が運営しているため、絶対に倒産しないとは言い切れません。万が一経営破綻した場合、お墓がどうなるのかは事前に確認しておく必要があります。

【元石材店員が解説】民営霊園はこんな方におすすめ!

民営霊園が向いている方

  • お墓のデザインや石の種類にこだわりたい
  • 生前のうちにお墓を建てておきたい(寿陵)
  • お参りのしやすさや設備の充実度を重視する
  • 公営霊園の抽選を待たずに、すぐにお墓を決めたい

私の母のお墓も、家族でじっくり話し合った結果、都内の民営霊園に決めました。決め手は、いつでもお参りに行けるアクセスの良さと、車椅子の母でも安心なバリアフリー設計、そして何より、いつも綺麗に管理されている明るい雰囲気でした。

【寺院墓地】手厚い供養と歴史的なつながり

寺院墓地とは、お寺が管理・運営している墓地のことで、その多くはお寺の境内にあります。
お墓を持つためには、そのお寺の「檀家(だんか)」になることが一般的です。

寺院墓地のメリット|故人を安心して任せられる供養

寺院墓地の最大のメリットは、手厚い供養を受けられる安心感にあります。

  • 手厚い供養
    お寺の住職が日常的にお経をあげてくれるなど、手厚く供養してもらえるのが何よりの魅力です。 お盆やお彼岸には合同法要を執り行ってくれるお寺も多く、お墓の承継者がいなくなってしまった場合でも、永代にわたって供養してもらえる安心感があります。
  • 法要の相談がしやすい
    葬儀や法要の際に、すぐに住職に相談できるのは心強い点です。 法要の場所も、お寺の本堂などを使わせてもらえることが多く、移動の手間が省けます。
  • アクセスの良い場所が多い
    古くから地域に根差しているお寺が多いため、比較的交通の便が良い場所にあることが多いのもメリットの一つです。

寺院墓地のデメリット|「檀家」制度の理解が必須

寺院墓地を選ぶ際には、「檀家」になるという意味を正しく理解しておく必要があります。

  • 檀家としての務め
    檀家になるとは、そのお寺を経済的に支える「旦那(だんな)」になるということです。 年間の管理費とは別に、お寺の行事への参加や、本堂の修繕費などの「寄付」を求められることがあります。
  • 費用負担
    入檀料(檀家になるための費用)や、法要の際のお布施、前述の寄付など、霊園に比べて費用負担が大きくなる可能性があります。
  • 宗派の制約
    基本的にお寺の宗派に帰依する必要があり、法要などもそのお寺の宗派のしきたりに則って行われます。 もしご自身の家の宗派と異なる場合は、改宗が必要になることもあります。

【元石材店員が解説】寺院墓地はこんな方におすすめ!

寺院墓地が向いている方

  • 先祖代々お付き合いのある菩提寺(ぼだいじ)がある
  • 手厚い供養を何よりも大切にしたい
  • 檀家としての務めや費用負担について、家族の理解が得られている
  • お寺の住職や地域とのつながりを大切にしたい

最近では、檀家にならなくても利用できる永代供養墓などを備えたお寺も増えています。寺院墓地に興味があるけれど檀家になるのは少しハードルが高い、という方はそうした選択肢も検討してみると良いでしょう。

後悔しない霊園選びのための5つのチェックポイント

どの種類の霊園にするか方向性が決まったら、次は具体的な霊園選びのステップに進みます。
ここでは、私がお客様に必ずお伝えしていた5つのチェックポイントをご紹介します。

ポイント1:立地とアクセス|「誰が、どのようにお参りするか」を具体的に

お墓は建てて終わりではありません。大切なのは、その後お参りを続けられるかどうかです。

  • 自宅からの距離と時間: 無理なく通える距離か、交通費はどれくらいかを確認しましょう。
  • 交通手段: 車で行くのか、公共交通機関を使うのか。 最寄り駅やバス停からの距離、送迎バスの有無も重要です。
  • 将来を考える: 今は車があっても、将来運転できなくなる可能性も考慮しましょう。子どもや孫の世代がお参りしやすい場所か、という視点も大切です。

ポイント2:費用総額|永代使用料・墓石代・管理費をトータルで考える

お墓にかかる費用は、大きく分けて3つあります。

  1. 永代使用料: 墓地の土地を永代にわたって使用する権利料。
  2. 墓石工事費: 墓石そのものの代金と、設置工事の費用。
  3. 年間管理費: 霊園の共有部分(通路や水道施設など)を維持管理するための費用。

パンフレットに書かれているのは永代使用料だけのことが多いので注意が必要です。墓石代や管理費も含めた総額でいくらかかるのかを必ず確認しましょう。

お墓の費用相場について
「全国優良石材店の会(全優石)」が2025年に実施した調査によると、墓石の平均購入価格は169.5万円でした。 これに永代使用料が加わるため、一般墓の費用相場は総額で150万円~350万円程度とされています。

ポイント3:設備と管理体制|必ず現地で確認したいこと

パンフレットやウェブサイトだけでは分からないのが、現地の雰囲気や管理状況です。必ず一度は足を運び、ご自身の目で確かめることが後悔しないための鉄則です。

  • 園内の清掃状況: 通路や共有スペースは綺麗に清掃されているか。
  • 水はけや日当たり: 雨の日に水たまりができていないか、日当たりは良いか。 湿気が多いと墓石に苔が生えやすくなります。
  • 設備: 水汲み場、トイレ、休憩所、法要施設などの設備は整っているか。
  • バリアフリー: 参道は平坦か、車椅子でもお参りしやすいか。
  • スタッフの対応: 見学時のスタッフの対応が丁寧かどうかも、その霊園の姿勢を知る上で重要なポイントです。

ポイント4:宗教・宗派の条件|自分たちの信仰に合っているか

公営霊園や民営霊園の多くは宗教不問ですが、寺院墓地の場合は宗派の確認が必須です。
また、民営霊園でも、運営母体が宗教法人であるため、特定の宗教儀式への参加が求められるケースがないとは言い切れません。契約前に規約をしっかりと確認しましょう。

ポイント5:将来性|承継者の問題と霊園の経営状況

お墓は代々受け継いでいくものです。

  • 承継者の確認: 将来、誰がお墓を守っていくのかを家族で話し合っておきましょう。もし承継者がいない場合は、永代供養付きのお墓などを検討する必要があります。
  • 霊園の経営状況: 特に民営霊園の場合、経営が安定しているかどうかは重要なポイントです。見学時に、これまでの経営実績や今後の展望などを質問してみるのも良いでしょう。

お墓選びのよくある質問(Q&A)

Q1. 永代供養墓と今回解説された一般墓の違いは何ですか?

A1. 最も大きな違いは、お墓を誰が管理・供養するかという点です。
一般墓は家族や子孫が代々継承し、管理・供養を行いますが、永代供養墓は、承継者がいなくても霊園やお寺が永代にわたって管理・供養をしてくれるお墓のことです。

Q2. 生前にお墓を建てる「寿陵」のメリットは?

A2. 生前にお墓を建てることを「寿陵(じゅりょう)」と呼び、古くから縁起の良いこととされています。
メリットとしては、以下の3点が挙げられます。

  1. 自分の気に入ったお墓を選べる: 場所やデザインなど、自分の希望を反映させることができます。
  2. 遺される家族の負担を軽減できる: 家族がお墓選びで悩んだり、急な出費で困ったりするのを防げます。
  3. 相続税対策になる: お墓は「祭祀財産」とされ、相続税の課税対象外となります。 生前に購入しておくことで、その分の現金を非課税財産にすることができます。

まとめ:ご家族で話し合い、心から納得できる選択を

公営霊園、民営霊園、寺院墓地。それぞれに異なる魅力と注意点があることをご理解いただけたでしょうか。

お墓選びに「これが唯一の正解」というものはありません。費用、アクセス、供養の形、デザインの自由度…何を一番大切にしたいかは、人それぞれ、ご家族それぞれで違うからです。

5年前に母のお墓を選んだ時、私たち家族が一番大切にしたのは「みんながいつでも笑顔でお参りに来られる場所であること」でした。だからこそ、何度も現地に足を運び、日当たりや周りの環境、管理の様子を確かめました。

お墓選びは、故人を偲び、家族のこれからを考える、とても大切な時間です。
どうか焦らず、まずはご家族で「どんなお墓がいいかな」と話し合うことから始めてみてください。そして、この記事でご紹介したポイントを参考に、いくつかの霊園を実際に見学してみてください。

きっと、あなたとご家族にとって、心から安らげる場所が見つかるはずです。
そのお手伝いが少しでもできたなら、終活アドバイザーとして、そして母を亡くした娘として、これ以上ない喜びです。